「駅から徒歩15分以内で、予算は〇〇万円。これで探してください」
不動産屋のカウンターで、こんな風に条件を伝えていませんか? おそらく大半の人が「はい、わかりました!」と笑顔でパソコンを叩く営業マンを想像するはずです。
しかし、現役の不動産営業である私の立場から、残酷な事実を一つお伝えします。
お客様から言われた「徒歩15分」という条件を、そのまま不動産業者の検索システムに打ち込んでプリントアウトしてくるだけの営業マンには、ハッキリ言って注意が必要です。
私自身、マイホームを購入した当事者だからこそ、家を買うという決断の重さは痛いほどわかりますし、資金計画の恐ろしさも身をもって知っています。だからこそ、人生を左右する物件探しにおいて「言われた条件の通りにしか動かない担当者」には強い危機感を覚えるのです。
今回は、不動産屋のカウンターの裏側で何が起きているのか。そして、本当に優秀な営業マンが「駅からの距離」ではなく「地名(エリア)」で物件を探す理由をお話しします。
条件通りに探すだけなら「スーモ」で十分

はっきり言ってしまうと、お客様の指定した検索条件通りに物件を調べるだけなら、スマホでスーモ(SUUMO)などのポータルサイトを眺めていれば十分に情報は得られます。わざわざ不動産屋に足を運ぶ意味がありません。
では、なぜ仲介手数料を払ってまでプロの不動産屋を頼るべきなのか。
それは、お客様が「この物件で決めていいんだ」と心から納得して決断できるように、比較検討するための材料をたくさん見せることが営業マンの最大の役割だからです。また、安心安全の取引を進めるためには、安心できる不動産会社、お任せできる営業マンを見極める必要があります。
同じ条件のエリアはもちろん、少し離れた場所にあるもっと良いお家など、色々な物件を実際に見て回ることでしか「自分たちにとって何が本当に大切か」は見えてきません。パソコンの画面だけを見て、言葉だけで「ご希望の条件だと、他にはもう無いですね」と終わらせる営業マンには本当に注意してください。
「3駅離れたエリア」まで比較する

不動産業者が使う物件検索システムで「駅から徒歩15分以内」と入力して検索ボタンを押すと、当然ですが「徒歩16分」の物件はすべて画面から消え去ります。たった1分、大人の足なら誤差レベルの距離の違いで、相場より数百万円安い掘り出し物が弾かれてしまうのです。
そのため、優秀な営業マンは「駅徒歩○分」という条件には縛られず、ご希望の駅だけでなく、比較ができるように3駅ほど離れたエリア(地名)まで広く検索をかけます。
たとえば、希望が「徒歩15分以内」だったとしても、「駅徒歩20分だけど、雨の日はすぐ近くからバス便も使える環境の良い物件」があれば、絶対に検討のテーブルに乗せるべきです。不動産は点で見るのではなく「面」で見なければ、本当の価値がわかりません。
「資産性」を追う投資家目線が陥る罠
もちろん、駅近の物件が資産性や将来の売却に有利なのは事実です。
しかし、日々の販売現場で見ていると、「いつか売るかもしれないから」と資産価値を最優先に求める投資家目線で家探しをしている人たちは、結果的に「快適な家」を取得できず、あまり良い買い物ができていないケースを山のように見てきました。
永く快適に過ごしてもらいたいと考えると、図面上の駅距離やスペックよりも、日々の暮らしの快適さを左右する「環境」の方がよほど重要です。
家探しは投資ではありません。毎日の生活環境を買う行為なのです。
まとめ:家探しの目的を見失わないために

ポータルサイトを毎晩眺めていると、いつの間にか「駅距離」や「築年数」といった条件の数字パズルを解くことが目的になってしまいがちです。
言われた通りの物件図面を出すだけの「御用聞き」ではなく、あなたの人生の背景まで汲み取り、「少し駅は離れますが、こっちのエリアの方が絶対に幸せになれますよ」と、プロの視点で選択肢を広げてくれる担当者。
そんな「生涯の相談相手」を見つけることが、理想のマイホームへの一番の近道です。